
個人開発を始める際、誰もが一度は悩むのが「データベース、どれがいいの?」という問題です。
「できれば無料で使い続けたい」 「でもインフラ設定に時間をかけたくない」 「ユーザー認証や画像の保存もまとめてやりたい」
そんなわがままな要望に応えるべく、現代の個人開発における7つの主要な選択肢を、エンジニアの視点で徹底解説します。最新の2026年の無料枠制限(クォータ)や自動停止の仕様も踏まえ、本当に個人開発で使いやすいデータベースを厳選しました。
比較する7つのデータベース(BaaS / DBaaS)
現在、個人開発で無料枠が充実しており、かつ開発体験が良いのは以下の6つです。
- Supabase:PostgreSQLベースの最強BaaS
- Firebase:信頼と実績のGoogleインフラ・NoSQL
- Turso:コールドスタートゼロの爆速SQLite
- PocketBase:SQLite内蔵の超軽量セルフホストBaaS
- Appwrite:セルフホストも容易なオールインワンBaaS
- Neon:ブランチ機能を持つサーバーレスPostgreSQL
- Convex:リアルタイム同期に特化した次世代BaaS
1. Supabase (最強の全部入り・PostgreSQL)
「Firebaseのオープンソース版」を掲げて登場したサービスです。中身は本格的なPostgreSQLを採用しています。
強み
認証、ストレージ、リアルタイム機能、エッジ関数などが全てセットになっています。SQLの強力なリレーションがそのまま使えるため、複雑なデータ構造にも柔軟に対応できます。Next.jsやVercelといったモダンなフロントエンド環境との相性も抜群です。
注意点
無料枠では「1週間アクセスがないとデータベースが一時停止」されます。再起動に数十秒から数分かかるため、完全に放置するようなポートフォリオサイト等には少し注意が必要です。また、Dockerでのセルフホストも可能ですが、快適に動かすには高スペックなサーバー(推奨8GB以上のRAMなど)が必要です。
利用シーン
Vercelと組み合わせて、本格的なWebアプリケーションを爆速で立ち上げたい場合に最適です。
2. Firebase (信頼と実績のGoogle・NoSQL)
モバイルアプリ開発では定番中の定番です。データベースはNoSQL(Firestore)を採用しています。
強み
最大のメリットは、無料枠(Sparkプラン)であっても「アクセスがなくてもデータベースが一時停止しない」点です。放置前提のポートフォリオ等に最適です。また、TTL(Time to Live)機能を使って古いデータを自動削除する仕組みを作れば、1GBの無料枠内で半永久的に運用することも可能です。
注意点
以前は無料だったSMS認証(電話番号OTP)が従量課金制になりました。また、NoSQLであるためSQLの「JOIN」が使えません。※最近PostgreSQLが使える「Data Connect」も登場しましたが、現在は90日間の無料トライアルのみです。
利用シーン
Flutter等でのスマホアプリ開発や、長期間放置する前提の小規模ツールに向いています。
3. Turso (コールドスタートゼロ・爆速SQLite)
SQLiteからフォークされた「libSQL」を採用した、データベース機能特化型サービスです。
強み
リクエストのたびにサーバーを起動する待ち時間がなく、「コールドスタートが完全にゼロ」という圧倒的なレスポンス速度を誇ります。無料枠でも日本(東京)リージョンを選択でき、5GBのストレージと月間5億回の読み取りという非常に寛大なクォータが魅力です。
注意点
最近のアップデートにより、無料枠での「エッジレプリケーション機能」が廃止され、単一リージョンでの運用となりました。また、BaaSではないため、認証やストレージ機能は内蔵されておらず、ClerkやAWS S3等と組み合わせる必要があります。
利用シーン
認証は別で用意し、「とにかく速くてコールドスタートのないSQLデータベース」を日本国内から高速に叩きたい場合に最適です。
4. PocketBase (自作派・節約派の救世主)
Go言語で作られた、SQLiteベースの超軽量バックエンドです。
強み
たった1つの実行ファイルで、データベース、ユーザー認証、ファイルストレージ、管理画面がすべて完結します。自分自身のサーバーで動かすため、突然の一時停止やクラウド特有の無料枠超過の心配がありません。
注意点
SaaS(クラウドサービス)として提供されているわけではないため、自分でVPSなどのサーバーを契約し、セキュリティやバックアップを管理する手間がかかります。
利用シーン
月額数百円のVPSを借りて、ベンダーロックインを避けて自由にインフラを構築したい自作派の方におすすめです。
5. Appwrite (セルフホストの雄・オールインワン)
オープンソースで開発されている、包括的なバックエンドプラットフォーム(BaaS)です。内部DBはMariaDBを採用しています。
強み
クラウド版もありますが、Dockerを用いたセルフホストがSupabaseよりも軽量(RAM 2GB程度でも動作可能)なのが最大の魅力です。Supabaseと同等の「認証」「データベース」「ストレージ」「関数」を備えています。
注意点
クラウド版(Freeプラン)は最近ポリシーが変更され、プロジェクト数の上限が2つになりました。また「7日間アクセスがないと一時停止」されますが、Supabaseと違いコンソールから即時復帰(瞬時に再起動)できるという利点があります。
利用シーン
将来的なデータの手元管理を見据えてセルフホストしたい方や、クラウドの自動停止から即座に復旧できるオールインワンBaaSが欲しい方に最適です。
6. Neon (Serverless PostgreSQL)
データベースの運用を極限までシンプルにした、サーバーレスのPostgreSQLです。
強み
最大の特徴は、Gitのようにデータベースを「ブランチ分け」できる機能です。本番環境のデータベースをボタン一つでコピーして安全にテストができます。5分間アクセスがないと自動でスリープ(ゼロスケール)して無料枠を節約しますが、復帰にかかる時間が約350ミリ秒と非常に短いため、一時停止によるダウンタイムをほぼ感じさせません。「Neon Auth」という認証機能も最大6万MAUまで無料で使えます。
注意点
Tursoとは異なり、現在日本(東京)リージョンがありません(アジア圏はシンガポール等になるため、若干のレイテンシが発生します)。
利用シーン
Supabaseのような完全停止を避けつつ、本格的なPostgreSQLやデータベースのブランチ機能を無料で使いたい方におすすめです。
7. Convex (リアルタイム同期に特化した次世代BaaS)
TypeScriptに特化し、バックエンドとフロントエンドの状態管理を自動で同期するリアクティブプラットフォームです。
強み
データベースの変更が即座にフロントエンド(Reactなど)のUIに反映されるため、キャッシュや再フェッチのロジックを手動で書く必要がありません。無料枠で0.5GBのストレージ、認証、ファイルストレージ、定期実行ジョブ(Cron)などが揃っています。
注意点
無料枠のリソースは「米国(US)リージョン」でのみ有効であり、ヨーロッパ等の他リージョンを使うと割増料金がかかるため、日本から使う場合はUSリージョンを選ぶのが基本となります。
利用シーン
React/Next.jsと組み合わせて、リアルタイム性の高いアプリケーション(チャットやコラボレーションツール)を最少のコード量で構築したい方に最適です。
機能と特徴の徹底比較マトリクス
| 機能・要素 | Supabase | Firebase | Turso | Neon | Appwrite | Convex | PocketBase |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| カテゴリ | BaaS | BaaS | DBaaS | DBaaS(Auth付) | BaaS | BaaS | BaaS |
| 主なベースDB | PostgreSQL | Firestore (NoSQL) | libSQL (SQLite) | PostgreSQL | MariaDB | 独自(リアクティブ) | SQLite |
| ユーザー認証 | あり | あり(SMS有料) | なし | あり(Neon Auth) | あり | あり | あり |
| ストレージ | あり | あり | なし | なし | あり | あり | あり |
| 日本リージョン | 選べる | 選べる | 選べる | なし(シンガポール等) | 選べる | USリージョン推奨 | 自前 |
| 放置時の一時停止 | 約1週間で停止(復帰遅) | なし | なし(即時起動) | 5分で停止(約350msで即時復帰) | 約1週間で停止(即時復帰) | なし | なし(自前運用) |
結局どれを選べばいい?(ユースケース別ガイド)
迷っている方は、ご自身のプロジェクトの性質に合わせて以下の基準で選んでみてください。
SQLを使いたいし、認証もストレージも一気に揃えたい!
👉 Supabase がおすすめ。モダンフロントエンドのベストパートナーです。
絶対にデータベースを一時停止させたくないし、Googleのインフラに乗りたい
👉 Firebase がおすすめ。モバイルアプリや放置前提のプロジェクトに最適です。
インフラは自分で握りたい。でも高機能なBaaSが欲しい
👉 Appwrite がおすすめ。Dockerを使ったセルフホストで真価を発揮します。
とにかく軽量に、自分のサーバー上にBaaSを構築したい
👉 PocketBase がおすすめ。1ファイルで動く手軽さは圧倒的です。
DBのブランチ機能を使って、安全でモダンな開発フローを実現したい
👉 Neon がおすすめ。データベースの開発体験が劇的に向上します。
認証とかはいらない。とにかく速くて手軽なSQLデータベースが欲しい
👉 Turso がおすすめ。エッジ配置による超低遅延が魅力です。
フロントエンドとバックエンドのデータ同期を自動化して、最速でReactアプリを作りたい
👉 Convex がおすすめ。データフェッチの概念が変わります。
あなたに最適なデータベース診断
以下のシミュレーターで、自分のプロジェクトに必要な条件をチェックしてみてください。最適な選択肢を自動で提案します。
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おわりに
今回比較した7つのデータベースは、どれも個人開発を強力に後押ししてくれる素晴らしい技術です。無料枠の制限変更は頻繁に行われますが、それぞれのアーキテクチャの強みを理解していれば、プロジェクトのフェーズに合わせて最適なバックエンドを選ぶことができます。
最後は公式ドキュメントや管理画面のUIを見て「一番ワクワクする」ものを選ぶことも、モチベーション維持には非常に重要です。この記事が皆さんの開発の第一歩を後押しできれば幸いです!

