
2026年4月23日、待望の長期サポート版である Ubuntu 26.04 LTS (コードネーム: Resolute Raccoon) がリリースされました。
前回のLTSであるUbuntu 24.04から「安全にアップグレードするやり方が知りたい」「途中でエラーが出ないか不安」と検討している方も多いと思います。筆者も実際にHyper-V環境および物理マシンにて、Ubuntu 24.04から26.04へのアップグレードを実施し、問題なく完了できることを確認しました。
本記事では、Waylandへの完全移行やメモリ要件の変更といったアップグレード前に知っておくべき重大な注意点から、途中で失敗しない確実なアップグレード手順、そして依存関係エラーへの対処などトラブルシューティングまでを網羅して徹底解説します。
1. Ubuntu 26.04 (Resolute Raccoon) の特徴とメリット
Ubuntu 26.04は、最新のハードウェア対応や開発者向けの機能強化が目白押しのリリースです。主な進化のポイントを見てみましょう。
Linux Kernel 7.0 & GNOME 50
システムのコアとなるカーネルには Linux Kernel 7.0 が採用され、最新ハードウェアのサポート強化とパフォーマンス向上が図られています。 また、デスクトップ環境は GNOME 50 となりました。UIのブラッシュアップはもちろん、VRR(可変リフレッシュレート)やFractional Scaling(スケーリングの微調整)への対応がより洗練され、滑らかで快適な操作感を提供します。
AI・開発環境の強化
近年のAIブームを反映し、NVIDIA CUDA がOS標準で同梱されるようになりました。さらに、AMDの ROCm プラットフォームも公式リポジトリから簡単にインストール可能となり、ローカルでのAI開発やLLMの実行環境が構築しやすくなっています。
セキュリティとパフォーマンスの進化
TPM(Trusted Platform Module)を利用したフルディスク暗号化がサポートされ、エンタープライズレベルの強固なセキュリティを簡単に導入できるようになりました。さらに、OSのコアコンポーネントにおいてメモリセーフな言語(Rustなど)の採用が拡大しており、根本的な脆弱性対策が進んでいます。
2. アップグレード前の重要な注意点
大きなメリットがある一方で、24.04からアップグレードする際にはいくつか重大な注意点があります。
最小メモリ要件の引き上げ(6GB)
Ubuntu 26.04から、システムが快適に動作するための推奨最小メモリ要件が 6GB に引き上げられました。 物理マシンであれば多くの場合はクリアできますが、Hyper-VやVirtualBoxなどの仮想マシンで動かしている場合は、割り当てメモリが不足していないか必ず確認してください。
Waylandへの完全移行
今回のリリースから、従来のディスプレイサーバーである Xorg/X11 のサポートが廃止され、Waylandのみ となりました。 これにより、一部の古いアプリケーションや、特定の画面共有ソフト、独自のキーバインドツールなどが正常に動作しなくなる可能性があります。事前に利用中の必須アプリがWaylandに対応しているか確認しましょう。
公式アップグレードパスと早期アップグレードについて
通常、LTS間の公式なアップグレードパス(通知が出てからボタン一つでアップグレードできる状態)は、最初のポイントリリースである Ubuntu 26.04.1(2026年7月頃を予定) まで提供されません。 すぐに26.04へ移行したい場合は、コマンドに -d (development) オプションを付けて強制的にアップグレードを実行する必要があります。本記事ではその手順も解説しますが、実行は自己責任で行ってください。
3. 【実践】Ubuntu 24.04 から 26.04 へのアップグレード手順
ここからは、実際に24.04から26.04へ移行するための具体的な手順を解説します。 Hyper-V環境での先行テスト、および8GB物理マシンの両方で成功した確実な手順です。
ステップ 0:事前準備(非常に重要)
アップグレードはシステムの中核を書き換えます。事前のバックアップが成功の9割を決めると言っても過言ではありません。
- データのバックアップ
- PPA の確認
ステップ 1:現在のシステム(24.04)を最新にする
古いパッケージが残っていると競合の原因になるため、完全にシステムを「掃除」してから開始します。
端末を開き、以下のコマンドを順番に実行してください。
# パッケージリストの更新とアップグレード
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
# 不要な依存パッケージの削除
sudo apt autoremove -y
# システム全体の更新(重要)
sudo apt dist-upgrade -y
# 一度再起動して、最新状態で正常に起動することを確認
sudo reboot
ステップ 2:アップグレードの実行
再起動後、いよいよアップグレードを実行します。(※前述の通り、26.04.1のリリース前は -d フラグが必須です)
sudo do-release-upgrade -d
💡 実行中に聞かれることへの対処 アップグレードプロセス中は、いくつかユーザーに判断を求めるプロンプトが表示されます。
4. アップグレード後のトラブルシューティングと事後チェック
無事にUbuntu 26.04の画面にログインできたら、環境を元通りに使えるようにするための事後チェックや、固有のトラブルシューティングを行います。
① keyd などのカスタムビルドアプリの再構築
OSのメジャーアップグレードでLinuxカーネル(今回は7.0)が更新されると、キーボードマッピングツールの keyd のようにカーネルレベルで動作するアプリは動かなくなることがあります。 一度ソースからビルドし直すのが最も確実です。
cd ~/keyd # keydのソースがあるディレクトリへ移動
make clean
make
sudo make install
sudo systemctl restart keyd
② 常駐エージェントやコンテナ環境の動作確認
バックグラウンドで動かしているサービスが正常に起動しているか確認します。
③ Hyper-V 環境特有のチェック
Hyper-V 上で仮想マシンとして動かしている場合は、以下の「26.04 特有の挙動」をチェックしておきましょう。
④ 【トラブル対処】依存関係エラー(赤いメッセージ)が出た場合
アップグレードプロセスの開始時や途中で、赤い文字で「依存関係が解決できない」といったエラーが出ることがあります。 これは大半がサードパーティ製PPA(リポジトリ)の競合や、古いパッケージの残留が原因です。 エラーが出た場合は慌てずに、ステップ1の sudo apt autoremove -y や sudo apt dist-upgrade -y が正常に完了しているかを再確認し、/etc/apt/sources.list.d/ 等のサードパーティリポジトリを手動で無効化してから再度実行してください。
5. まとめ
Ubuntu 26.04 LTS (Resolute Raccoon) は、AI開発への標準対応やGNOME 50の採用など、非常に魅力的なアップデートが施されています。 Waylandへの完全移行やメモリ要件の増加には注意が必要ですが、事前のバックアップと手順をしっかり守ることで、24.04からのアップグレードはスムーズに行えます。
特に、keydのようなシステムに深く関わるツールの再ビルドを忘れないようにすることが、アップグレード後のトラブルを防ぐコツです。
ぜひ本記事の手順を参考に、最新のUbuntu環境を手に入れてみてください!
