
Ubuntu 26.04 LTSにアップグレードしたら、今まで使えていたGoogleドライブのマウントが消えていた――そんな経験をしていませんか?
Ubuntu 26.04(GNOME 50)では、これまで「設定」>「オンラインアカウント」から簡単に接続できていたGoogleドライブの統合機能が公式に廃止されました。WindowsやMacではGoogle公式のデスクトップアプリが使えますが、Linuxには公式クライアントが存在しないため、自分で代替手段を構築する必要があります。
この記事では、代替ツール「google-drive-ocamlfuse」を使って、最もつまずきやすいGCP(Google Cloud Platform)のOAuth設定から、PC起動時の自動マウント、複数アカウントの管理、トラブルシューティングまで、この1ページだけで完結する完全ガイドとして解説します。
Hyper-Vなどの仮想環境のUbuntuを利用して「オンラインアカウント」の接続ができない方は以下の記事を参考にしてください。
そもそもなぜ廃止されたのか? 背景と技術的な理由
従来の仕組み
Ubuntu(GNOMEデスクトップ環境)では、「GNOME Online Accounts(GOA)」という機能を通じて、設定画面からGoogleアカウントにログインするだけでNautilus(ファイルアプリ)のサイドバーにGoogleドライブがマウントされていました。
この裏側では libgdata というライブラリがGoogleのAPIとの橋渡しを担っていました。
廃止に至った経緯
GNOME 50(Ubuntu 26.04が採用)のリリースにあたり、GNOME開発チームはこの機能の削除を決断しました。理由は以下の通りです。
その結果、GNOME Online Accountsの「ファイル」トグルが無効化され、Googleドライブのマウント機能だけが削除されました。なお、メール・連絡先・カレンダーの同期は引き続き利用可能です。
Ubuntu 24.04 LTSなど旧バージョンを使用中の方は引き続きこの機能を利用できますが、今後のセキュリティ更新は期待できません。
Windows / Mac / Linuxで何が違うのか? Googleドライブの対応状況
Googleドライブの利用環境はOSによって大きく異なります。この違いを理解しておくと、Linux特有の設定作業が必要な理由がわかります。
OS別の対応比較
| 項目 | Windows / macOS | Linux(Ubuntu) |
|---|---|---|
| Google公式デスクトップアプリ | あり(Google Drive for desktop) | なし |
| インストール方法 | 公式サイトからインストーラをダウンロード | サードパーティ製ツールを自力で導入 |
| ファイル同期の方式 | ストリーミング方式 or ミラーリング方式を選択可 | FUSE経由でクラウド上のファイルにアクセス |
| オフラインアクセス | ミラーリング方式なら全ファイルがローカルに保持される | 基本的にオンライン時のみ利用可能 |
| GCPのOAuth設定 | 不要(公式アプリが処理) | 必要(自分でAPIキーを作成) |
| 複数アカウント対応 | アプリのUI上で切り替え可能 | ラベル機能で手動設定 |
Linuxユーザーが知っておくべきポイント
手順①:GCPでのAPI有効化とOAuth設定(最重要ステップ)
ここが今回の設定で最も重要かつ、最もつまずきやすいステップです。GCPの利用は無料で、数分で完了します。
1. プロジェクトの作成とAPIの有効化
- Google Cloud Console にアクセスし、Googleアカウントでログインします。
- 画面左上のプロジェクト選択プルダウンから「新しいプロジェクト」を作成します(例:Ubuntu-GDrive)。プロジェクト名は自由ですが、後で何のために作ったかわかる名前にしておきましょう。
- 左側のメニュー(三本線アイコン)から「APIとサービス」>「有効なAPIとサービス」を開きます。
- 画面上部の「+ API とサービスの有効化」をクリックします。
- 検索窓で「Google Drive API」を検索し、表示された「Google Drive API」をクリックして「有効にする」を押します。
2. OAuth 同意画面の設定(新UI対応・テストユーザー登録が鍵)
2025年以降、GCPのUIが大幅に刷新されています。最新のGoogle Authプラットフォームの画面構成に沿って設定を行います。
- 左側のメニューから「OAuth 同意画面」(または「開始」)をクリックします。
- ステップ1:ブランディング / アプリ情報
- ステップ2:オーディエンス / 対象(ここが最重要)
- ステップ3:データアクセス
3. クライアントIDとシークレットの取得
- 左側のメニューから「認証情報」(または「クライアント」)をクリックします。
- 画面上部の「+ 認証情報を作成」から「OAuth クライアント ID」を選択します。
- アプリケーションの種類で「デスクトップ アプリ」を選択します。名前はデフォルトのままでも構いません。
- 「作成」をクリックします。
- 画面に表示された「クライアント ID」と「クライアント シークレット」の文字列をテキストエディタ等にコピーして保存しておきます。この2つの値はこの後のコマンドで使います。
手順②:Ubuntuへのツール導入と初回認証
GCPでの準備が整ったら、次はUbuntu側のターミナルを開いて作業を行います。
1. google-drive-ocamlfuseのインストール
ターミナルを開き、以下のコマンドを1行ずつ順に実行します。
sudo add-apt-repository ppa:alessandro-strada/ppa
sudo apt update
sudo apt install google-drive-ocamlfuse
2. 初回認証コマンドの実行
先ほどGCPで取得した「クライアント ID」と「クライアント シークレット」を使って、以下のコマンドを実行します。角括弧は不要です。取得した文字列をそのまま貼り付けてください。
google-drive-ocamlfuse -id YOUR_CLIENT_ID -secret YOUR_CLIENT_SECRET
実行例:
google-drive-ocamlfuse -id 123456789012-xxxxxxxxxx.apps.googleusercontent.com -secret GOCSPX-yyyyyyyyyyyyyyyy
3. ブラウザでの承認プロセス
コマンドを実行すると自動的にブラウザが立ち上がり、Googleのログイン画面が表示されます。
- GCPの「テストユーザー」に登録したGmailアカウントを選択してログインします。
- 「Google 側で確認されていません」という警告画面が表示されます(テストモードでは必ず表示されます)。左下の「詳細」をクリックし、展開された文章の下部にある「○○○ に移動(安全ではないページ)」をクリックして続行します。これは自分で作成したアプリなので安全です。
- アクセス権限のリクエスト画面で「許可」(または「続行」)をクリックします。
- ブラウザに「Access token retrieved correctly.」と表示されれば認証は成功です。ターミナルに戻って次のステップに進みましょう。
手順③:マウントの実行と自動起動設定
認証が完了したら、UbuntuのファイルマネージャでGoogleドライブを使えるようにします。
1. マウント用フォルダの作成と手動マウント
Nautilus上に表示させるための「空の受け皿」となるフォルダを作成し、マウントコマンドを実行します。
mkdir ~/GoogleDrive
google-drive-ocamlfuse ~/GoogleDrive
Nautilus(ファイルアプリ)を開き、ホームディレクトリの GoogleDrive フォルダ内にクラウド上のファイルが表示されていれば成功です。
Tips: フォルダをNautilusのサイドバーにドラッグ&ドロップすると、ブックマークとして登録でき、いつでもワンクリックでアクセスできるようになります。
2. PC起動時の自動マウント設定
現在のままでは、PCを再起動するたびにマウントが解除されてしまいます。以下のコマンド群をターミナルにすべてまとめてコピー&ペーストし、Enterキーを押してください。
mkdir -p ~/.config/autostart
cat << 'EOF' > ~/.config/autostart/google-drive.desktop
[Desktop Entry]
Type=Application
Exec=google-drive-ocamlfuse /home/YOUR_USERNAME/GoogleDrive
Hidden=false
NoDisplay=false
X-GNOME-Autostart-enabled=true
Name=Google Drive
Comment=Mount Google Drive on startup
EOF
注意:Exec= の行にある YOUR_USERNAME は、ご自身のUbuntuのユーザー名に置き換えてください。ユーザー名がわからない場合は、ターミナルで whoami コマンドを実行すると確認できます。
3. アンマウント(取り外し)方法
一時的にGoogleドライブの接続を解除したい場合は、以下のコマンドを使用します。
fusermount -u ~/GoogleDrive
手順④:複数のGoogleアカウントをマウントする(応用)
仕事用と個人用など、複数のGoogleアカウントのドライブを同時にマウントしたい場合は、ラベル機能を使います。
セットアップ
アカウントごとにラベル名とマウントポイントを分けて、それぞれ認証を行います。
# 仕事用アカウントの認証とマウント
google-drive-ocamlfuse -label work -id YOUR_CLIENT_ID -secret YOUR_CLIENT_SECRET
mkdir ~/GoogleDrive-Work
google-drive-ocamlfuse -label work ~/GoogleDrive-Work
# 個人用アカウントの認証とマウント
google-drive-ocamlfuse -label personal -id YOUR_CLIENT_ID -secret YOUR_CLIENT_SECRET
mkdir ~/GoogleDrive-Personal
google-drive-ocamlfuse -label personal ~/GoogleDrive-Personal
各ラベルの設定情報は ~/.gdfuse/[ラベル名]/ ディレクトリに個別に保存されます。一度認証が完了すれば、次回以降は -id と -secret の指定は不要です。
自動起動への追加
手順③と同じ要領で、アカウントごとに .desktop ファイルを作成してください。
トラブルシューティング
「403: access_denied」エラーが出る
最も多いトラブルです。GCPのOAuth同意画面で、テストユーザーにご自身のGmailアドレスが追加されていることを確認してください。テストモード(公開前の状態)では、明示的に登録されたユーザーしか認証できません。
「invalid_client」エラーが出る
クライアントIDまたはクライアントシークレットの入力ミスが考えられます。GCPの「認証情報」ページで正しい値を再度コピーし、コマンドを実行し直してください。また、google-drive-ocamlfuseのバージョンが古い場合にも発生します。バージョン 0.7.32 以上を使用してください。
認証をやり直したい
保存された認証トークンが破損した場合や、アカウントを変更したい場合は、設定ディレクトリを削除してから再認証します。
# アンマウント
fusermount -u ~/GoogleDrive
# 設定ファイルを削除(defaultラベルの場合)
rm -rf ~/.gdfuse/default
# 再認証
google-drive-ocamlfuse -id YOUR_CLIENT_ID -secret YOUR_CLIENT_SECRET
google-drive-ocamlfuse ~/GoogleDrive
ファイルの変更がすぐに反映されない
google-drive-ocamlfuseは、デフォルトで60秒間隔でサーバーの変更をチェックしています。別のデバイスで変更した内容がすぐに表示されない場合は、しばらく待つか、一度アンマウントして再マウントしてください。
APIのレート制限(Rate Limit Exceeded)に引っかかる
Google Drive APIには1日あたりのリクエスト数に上限があります。ファイルインデクサーやバックアップツールがマウントポイントを頻繁にスキャンしていると、この上限に達することがあります。Nautilusの検索インデクサー(tracker)がマウントポイントを対象にしていないか確認しましょう。
デバッグログを確認する
問題の原因がわからない場合は、デバッグモードで起動すると詳細なログが出力されます。
google-drive-ocamlfuse -debug ~/GoogleDrive
ログファイルは ~/.gdfuse/default/gdfuse.log に保存されます。エラーメッセージの特定に役立ちます。
補足:rcloneという選択肢について
google-drive-ocamlfuse以外にも、rclone というツールでGoogleドライブをマウントすることができます。どちらを選ぶかは用途次第です。
| 項目 | google-drive-ocamlfuse | rclone mount |
|---|---|---|
| 用途 | Googleドライブ専用 | 40以上のクラウドストレージに対応 |
| 設定の難易度 | やや簡単 | やや複雑(CLI操作が中心) |
| キャッシュ制御 | 基本的・自動 | VFSキャッシュで細かく調整可能 |
| パフォーマンス | 日常のファイル操作には十分 | 大量ファイルやメディア配信に強い |
| 向いている人 | デスクトップで手軽に使いたい人 | サーバー用途やパフォーマンスを重視する人 |
日常的にNautilusからファイルを閲覧・編集する用途であれば、google-drive-ocamlfuseの方がセットアップが簡単で扱いやすいでしょう。メディアサーバーの構築や大規模なファイル管理が目的であれば、rcloneの検討をおすすめします。
まとめ
Ubuntu 26.04ではGNOME Online AccountsによるGoogleドライブの統合機能が廃止されましたが、google-drive-ocamlfuseを使えば、これまでと同じようにNautilusからGoogleドライブのファイルにアクセスできます。
設定の流れを振り返ります。
- GCPでプロジェクトを作成し、Google Drive APIを有効化
- OAuth同意画面でテストユーザーに自分のGmailを登録(403エラー回避のため)
- 認証情報からクライアントIDとシークレットを取得
- Ubuntuにgoogle-drive-ocamlfuseをインストールし、取得したキーで認証
- マウントフォルダを作成し、自動起動を設定
最初のGCP設定がやや手間に感じるかもしれませんが、一度設定してしまえば、あとはPC起動のたびに自動でGoogleドライブが使える快適な環境が手に入ります。


