家族・高齢の親を詐欺とネット被害から守る|見守り設定と連絡ルール

離れて暮らす高齢の両親や祖父母が特殊詐欺やネットトラブルに巻き込まれないか心配している方は多いのではないでしょうか。ニュースで特殊詐欺やサポート詐欺の被害が報じられるたびに、「怪しい電話やメールには気をつけてね」と伝えていても、手口は年々巧妙化しており、口頭での注意喚起だけで防ぐのは困難です。

警察庁が公表した統計(令和6年確定値)によると、特殊詐欺の年間被害額は約721.5億円と過去最悪水準に達し、法人を除く被害者の約65%を65歳以上の高齢者が占めています。特に預貯金詐欺やキャッシュカード詐欺盗では、被害者の98%以上が高齢者に集中しています。また、パソコン画面に突然「ウイルスに感染しました」と警告を出し、大音量のアラートでパニックに陥らせて電話をかけさせる「サポート詐欺」についても、国民生活センターへの相談件数の多くを70代以上が占めています。

高齢者が騙されてしまうのは、ITリテラシーの低さだけが原因ではありません。「公的機関や家族を騙る突然の連絡」「大音量の警告音による心理的パニック」「誰にも相談できない孤立感」など、人間の心理的な隙を突いた攻撃が仕掛けられるためです。

大切な家族を守るために必要なのは、本人の警戒心に頼るのではなく、「そもそも危険な電話や画面に触れさせない技術的な仕組み(設定)」と、「困ったときにすぐ相談できる家族内の運用ルール」の2つをセットで整えることです。

この記事では、実家の固定電話、スマートフォン、パソコンの3大経路に対する具体的な防犯設定手順と、家族間で取り決めておくべき連絡ルールをわかりやすく解説します。

  1. この記事で行うこと
  2. 前提条件・対象読者
  3. 1. Quick Reference:家族・親を守る防犯対策早見表
  4. 2. 高齢者が狙われる詐欺・ネット被害の3大ルートと現状
    1. ルート1:固定電話(オレオレ詐欺・還付金詐欺・国際電話悪用)
    2. ルート2:パソコン閲覧時のサポート詐欺(偽セキュリティ警告)
    3. ルート3:スマートフォンへの迷惑SMS・迷惑電話(スミッシング)
  5. 3. 実家の固定電話を守る設定(国際電話休止と無償オプション)
    1. 手順1:NTTのナンバー・ディスプレイ無償化を申請する
    2. 手順2:国際電話の発着信を休止する(無償)
    3. 手順3:防犯機能付き電話機の導入または留守番電話の常時稼働
  6. 4. 親のスマートフォンを守る見守り設定(iPhone・Android)
    1. iPhone(iOS)で設定すべき見守り項目
      1. 不明な発信者を消音にする
      2. 不明な差出人からのメッセージをフィルタリングする
      3. スクリーンタイムでアプリ課金や勝手なインストールを制限する
    2. Androidで設定すべき見守り項目
      1. Google電話アプリの迷惑電話対策をオンにする
      2. Googleメッセージのスパム対策をオンにする
    3. 大手通信キャリアの迷惑電話対策サービスを活用する
  7. 5. 実家のパソコン(PC)を守るサポート詐欺対策
    1. 偽警告の正体と仕組みを共有しておく
    2. 対策1:広告ブロック拡張機能をブラウザに導入する
    3. 対策2:画面が消えないときの「強制終了手順」を物理メモで貼る
    4. 対策3:遠隔操作ソフトを入れてしまった場合の緊急手順
  8. 6. 「気をつけて」では防げない|家族で作る連絡ルールと合言葉
    1. ルール1:お金・電子マネー・暗証番号の話が出たら即座に電話を切って相談
    2. ルール2:家族だけの「合言葉」を決めておく
    3. ルール3:「怒らない・責めない」心理的セーフティネットを作る
  9. 7. トラブル発生時の緊急連絡先と相談窓口
  10. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 実家の親が「自分は騙されないから大丈夫」と言って設定変更を嫌がります。どう説得すればよいでしょうか?
    2. Q2. iPhoneで「不明な発信者を消音」に設定すると、病院や配送業者からの大切な電話に気づかない心配はありませんか?
    3. Q3. 遠隔操作ソフトを入れられてしまい、パソコンを操作されました。初期化は必須ですか?
  11. まとめ
  12. 次に読むおすすめ記事
  13. 参考情報

この記事で行うこと

  • 高齢者を狙う詐欺(固定電話、スマホ、サポート詐欺)の最新手口と被害実態を把握する
  • 実家の固定電話で国際電話の発着信休止とナンバー・ディスプレイの無償化を設定する
  • iPhoneおよびAndroidで迷惑電話・迷惑メッセージを自動遮断する設定を導入する
  • パソコンでのサポート詐欺を防ぐブラウザ設定と緊急時の強制終了手順を準備する
  • 金銭や暗証番号の要求に直面した際、迷わず相談できる家族間ルールと合言葉を取り決める
  • 被害に遭った、または遭いそうになった場合の公的相談窓口を整理する

前提条件・対象読者

  • 離れて暮らす高齢の両親や祖父母の安全を守りたいご家族の方
  • 実家の固定電話、スマートフォン、パソコンの防犯設定を代わりに設定してあげたい方
  • 専門用語に不慣れなシニア世代に無理な操作を強いず、システム側で自動防御したい方
  • 最終確認日:2026年11月(警察庁SOS47、総務省、IPA、国民生活センターの最新公式情報に基づく)

1. Quick Reference:家族・親を守る防犯対策早見表

まずは、効果が高く優先して設定すべき対策項目を機器・経路別に整理しました。実家に帰省した際や、電話でサポートできるタイミングに合わせて、順次設定を進めてください。

対象機器・経路具体的な対策内容所要時間防げる主な脅威設定窓口・方法
固定電話国際電話の発着信休止(無償)10分海外番号経由の特殊詐欺電話国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)
固定電話ナンバー・ディスプレイ無償化(70歳以上)10分不審電話、非通知着信NTT東(0120-722-455)・NTT西(0120-931-965)
固定電話留守番電話の常時稼働または防犯電話機導入5分アポ電、オレオレ詐欺、還付金詐欺電話機本体の設定、防犯機能付き電話機の設置
iPhone「不明な発信者を消音」を有効化3分未登録番号からの迷惑勧誘・詐欺電話設定 > 電話 > 不明な発信者を消音
iPhone「不明な差出人をフィルタ」を有効化3分スミッシング(フィッシングSMS)設定 > メッセージ > 不明な差出人をフィルタ
Android「発信者番号と迷惑電話対策」を有効化3分スパム電話、自動音声詐欺Google電話アプリの 設定 > 発信者番号と迷惑電話対策
パソコン広告ブロッカー導入・強制終了メモの掲示15分サポート詐欺(偽セキュリティ警告)ブラウザ拡張機能、Alt + F4 キー操作メモの貼付
家族ルールお金・カードの話が出たら即相談ルールと合言葉15分電子マネー詐欺、キャッシュカード手交詐欺家族間での話し合い、相談専用連絡先の共有

2. 高齢者が狙われる詐欺・ネット被害の3大ルートと現状

高齢者を狙う犯罪グループは、主に3つの侵入経路を使って接触してきます。それぞれの特徴と手口を理解しておくことが、効果的な対策の第一歩になります。

ルート1:固定電話(オレオレ詐欺・還付金詐欺・国際電話悪用)

固定電話は、今なお特殊詐欺の最大の侵入口です。警察庁の統計によると、オレオレ詐欺や預貯金詐欺の犯行予兆電話(アポ電)の多くが固定電話宛てにかかっています。

近年特に目立っているのが、海外の国番号(+1 や +44 など)から始まる国際電話番号を悪用した手口です。自動音声ガイダンスで「未納料金があります。法的措置へ移行します」と不安を煽ったり、警察官や総務省職員を装って「あなたの口座がマネーロンダリングに使われています」と電話をかけてきたりします。

ルート2:パソコン閲覧時のサポート詐欺(偽セキュリティ警告)

パソコンでニュースやWebサイトを閲覧している最中に、突然画面全体に警告が表示され、大音量のアラート音とともに「ウイルスに感染しました」「マイクロソフトのサポート窓口へお電話ください」といった偽の電話番号が表示される手口です。

国民生活センターへの相談では、70歳以上のシニア層からの相談が大幅に増加しています。パニックになった利用者が画面の番号に電話をかけると、親切なサポート担当者を装った犯人が遠隔操作ソフト(AnyDeskやTeamViewerなど)をインストールさせます。その後、有償サポート代金としてコンビニで電子マネーカード(Apple Gift CardやGoogle Playギフトカードなど)を購入させたり、ネットバンキング画面を開かせて預金を勝手に不正送金したりする深刻な被害が多発しています。

ルート3:スマートフォンへの迷惑SMS・迷惑電話(スミッシング)

スマートフォンの普及に伴い、シニア世代を狙ったSMS詐欺(スミッシング)も急増しています。

「荷物を配達しましたが不在のため持ち帰りました」「NTTドコモよりご利用料金のお知らせ」「電力会社より未納料金のお知らせ」といった文面で偽サイトのURLを踏ませ、ID・パスワードや個人情報を盗み取ったり、不正なアプリをインストールさせたりします。

3. 実家の固定電話を守る設定(国際電話休止と無償オプション)

実家の防犯対策で最も効果が高く、真っ先に行うべきなのが固定電話の対策です。以下の3つの設定を組み合わせることで、危険な電話の多くを水際で遮断できます。

手順1:NTTのナンバー・ディスプレイ無償化を申請する

NTT東日本およびNTT西日本では、特殊詐欺被害の防止に向け、70歳以上の高齢者がいる世帯を対象に、相手の電話番号が表示される「ナンバー・ディスプレイ」および非通知着信を自動拒否する「ナンバー・リクエスト」の初期工事費と月額利用料を無償で提供しています。

この優遇措置は自動的には適用されないため、事前の申し込みが必要です。離れて暮らす家族からの代理申し込みも受け付けています。

  • 対象条件:契約者本人が70歳以上、または70歳以上の方と同居している住宅用回線
  • 無償化内容:ナンバー・ディスプレイおよびナンバー・リクエストの月額基本料金・初期工事費
  • 申込窓口:NTT東日本 特殊詐欺対策ダイヤル(0120-722-455、受付9:00〜17:00)、NTT西日本 特殊詐欺対策ダイヤル(0120-931-965、受付9:00〜17:00、土日・年末年始除く)
  • 必要な情報:実家の固定電話番号、契約者の氏名、生年月日(年齢確認用)
  • 注意点:光コラボレーション事業者(ドコモ光、ソフトバンク光等)が提供するひかり電話を契約している場合は、契約先の各光コラボレーション事業者へお問い合わせください

手順2:国際電話の発着信を休止する(無償)

実家の親族や家族が海外と国際電話を利用する予定がない場合は、国際電話の発信および着信をまとめて休止しておくことを強くおすすめします。

「国際電話不取扱受付センター」へ連絡することで、固定電話での国際通話を無償で停止できます。これにより、海外国番号(+1、+852 など)からかかってくる詐欺電話を完全に着信拒否できます。

手順3:防犯機能付き電話機の導入または留守番電話の常時稼働

通話内容を録音する防犯機能付き電話機の設置は、詐欺犯に対して絶大な威力を発揮します。

電話がかかってきた際、呼び出し音が鳴る前に「この通話は防犯のため自動で録音されます」と相手にアナウンスを流す機能が付いた電話機であれば、証拠が残ることを嫌う詐欺犯は録音アナウンスの段階で通話を切断します。多くの自治体では、防犯機能付き電話機の購入費補助や無償貸与事業を実施しているため、実家の市区町村窓口を確認してみるとよいでしょう。

新しい電話機を購入しない場合でも、実家の固定電話を「24時間常時留守番電話」に設定しておく運用が非常に有効です。「普段は呼び出し音が鳴っても出ず、相手が留守電に用件と名前を吹き込んだのを確認してから受話器を取るか、折り返し電話をかける」という運用を徹底してください。

4. 親のスマートフォンを守る見守り設定(iPhone・Android)

スマートフォンは便利な連絡手段である一方、詐欺SMSや迷惑勧誘電話が直接届いてしまう窓口にもなります。親が不要なトラブルに巻き込まれないよう、端末の標準設定や通信キャリアの機能を活用して防御壁を作りましょう。

iPhone(iOS)で設定すべき見守り項目

iPhoneを使っている場合は、設定アプリから以下の3項目を有効にしておくことで、不審な電話やメッセージを自動的に遮断できます。

不明な発信者を消音にする

連絡先に登録されていない電話番号からの着信音を鳴らさず、直接留守番電話に送る設定です。

  1. iPhoneの 設定 アプリを開きます。
  2. 電話 をタップします。
  3. 不明な発信者を消音 をタップし、スイッチをオンにします。

この設定をオンにすると、連絡先、最近発信した履歴、Siriの提案に含まれない番号からの着信は消音され、不在着信として履歴に残るのみとなります。病院や役所など連絡が必要な番号は、事前に親のiPhoneの「連絡先」へ登録しておいてください。

不明な差出人からのメッセージをフィルタリングする

SMSに届く詐欺メッセージを通常のメッセージ一覧と分離する設定です。

  1. 設定 アプリを開きます。
  2. メッセージ をタップします。
  3. 不明な差出人をフィルタ のスイッチをオンにします。

これにより、メッセージアプリ内に「既知の差出人」と「不明な差出人」のタブが作成され、連絡先にない送信元からのSMSで通知が鳴るのを防ぐことができます。

スクリーンタイムでアプリ課金や勝手なインストールを制限する

不要な高額アプリの購入や、詐欺的な遠隔操作アプリのインストールを防止する設定です。

  1. 設定 アプリから スクリーンタイム を開きます。
  2. コンテンツとプライバシーの制限 をオンにします。
  3. iTunesおよびApp Storeでの購入(または アプリのインストールと購入)をタップします。
  4. App内課金 や アプリのインストール を 許可しない に設定し、家族だけが知るスクリーンタイム専用パスコードを設定します。

Androidで設定すべき見守り項目

Android端末を使っている場合は、Google標準のセキュリティ機能と電話アプリの設定を活用します。

Google電話アプリの迷惑電話対策をオンにする

Pixelシリーズや多くのAndroid端末に搭載されているGoogle電話アプリには、高精度な迷惑電話検知機能が備わっています。

  1. 電話 アプリを開き、右上のメニュー(3点アイコン)から 設定 をタップします。
  2. 発信者番号と迷惑電話対策 をタップします。
  3. 発信者番号と迷惑電話の番号を表示 および 迷惑電話をブロック をオンにします。

この設定を有効にすると、Googleのデータベースと照合し、迷惑電話や詐欺電話の疑いがある着信時に画面が赤く警告表示されるか、呼び出し音を鳴らさずに自動ブロックされます。

Googleメッセージのスパム対策をオンにする

  1. メッセージ アプリを開き、右上のプロフィールアイコンから メッセージの設定 をタップします。
  2. スパム対策 をタップします。
  3. スパム対策を有効にする をオンにします。

大手通信キャリアの迷惑電話対策サービスを活用する

ドコモ、au、ソフトバンクなどの通信キャリアが提供するセキュリティサービスも非常に有用です。

  • NTTドコモ:迷惑電話ストップサービス(無料、迷惑番号を指定して着信拒否)、あんしんセキュリティ(月額330円、危険な電話やSMSを自動警告・ブロック)
  • au(KDDI):迷惑メッセージ・電話ブロック(Pontaパスやシニア向けプラン等で利用可能、500万件超の事業者データベースと照合して安全な発信者名を表示)
  • ソフトバンク:ナンバーブロック(無料)、セキュリティパックプラス(詐欺ウォールや迷惑電話ブロックのセット)
  • シニア向け専用端末:ドコモ「らくらくホン」やワイモバイル「かんたんスマホ」などは、通話録音機能や不審電話警告機能が標準で組み込まれています。

5. 実家のパソコン(PC)を守るサポート詐欺対策

パソコン画面に突然表示されるサポート詐欺の偽警告は、高齢者にとって非常に強い恐怖を与えます。事前のブラウザ対策と、パニック時の対処手順を紙に書いて手元に置いておくことが最も確実な防衛策です。

偽警告の正体と仕組みを共有しておく

サポート詐欺の警告画面は、通常のWebサイトの広告枠などを悪用して全画面表示(フルスクリーンモード)させているだけのブラウザ上の表示に過ぎません。

パソコンが本当にウイルスに感染しているわけでも、Windowsやマイクロソフトが公式に警告を出しているわけでもありません。マイクロソフト公式が、ユーザーの画面に電話番号を表示して電話を促すことは絶対にありません。

対策1:広告ブロック拡張機能をブラウザに導入する

偽警告の多くは、悪質なアドネットワーク広告を通じて配信されます。実家のパソコンのブラウザ(Google ChromeやMicrosoft Edgeなど)に、信頼性の高い広告ブロック拡張機能(uBlock Origin Lite など)をインストールしておくだけで、偽警告画面が表示される確率を劇的に減らすことができます。

対策2:画面が消えないときの「強制終了手順」を物理メモで貼る

サポート詐欺の画面は、キー操作を奪ってブラウザを全画面表示にし、右上の「×」ボタン(閉じるボタン)を隠す構造になっています。これにより「パソコンが乗っ取られた」と錯覚してしまいます。

実家のパソコンのモニター横やキーボード付近に、以下の手順を太い文字で書いた紙のメモを貼り付けておいてください。

【パソコンに警告音や変な画面が出たときの約束】
1. 画面の電話番号には絶対に電話をかけない!
2. キーボードの「Alt」を押しながら「F4」キーを押す(画面が閉じます)
3. 閉じない場合は、パソコンの電源ボタンを長押しして電源を切る
4. すぐに家族(○○の携帯電話:090-XXXX-XXXX)へ連絡する

キーボード操作に慣れている親であれば、Ctrl + Shift + Esc キーを押してタスクマネージャーを起動し、ブラウザ(EdgeやChrome)を選択して「タスクの終了」を押す方法も有効です。

対策3:遠隔操作ソフトを入れてしまった場合の緊急手順

万が一、親が画面の指示に従って相手に電話をかけてしまい、遠隔操作ソフト(AnyDesk、TeamViewer、QuickSupportなど)をインストールしてしまった場合は、一刻を争います。以下の順序で直ちに対処してください。

  1. 物理的に通信を遮断する:パソコンのLANケーブルを抜くか、Wi-Fiの親機(ルーター)のコンセントを抜く、またはPCの機内モードをオンにしてインターネット接続を完全に遮断します。
  2. 金融機関への連絡:ネットバンキングのログイン情報やクレジットカード番号を入力してしまった場合は、直ちに銀行やクレジットカード会社の紛失・盗難デスクへ電話し、口座取引やカードの利用を一時停止します。
  3. アプリの削除と初期化:遠隔操作ソフトをアンインストールします。不安が残る場合や不正なファイルを埋め込まれた可能性がある場合は、パソコンを初期化(リカバリ)するのが最も確実です。

6. 「気をつけて」では防げない|家族で作る連絡ルールと合言葉

防犯設定をどれだけ整えても、新しい手口や対面の手交詐欺を100%システムだけで遮断することはできません。最後の砦となるのは、家族間のコミュニケーションルールです。

ルール1:お金・電子マネー・暗証番号の話が出たら即座に電話を切って相談

「お金の動き」が発生する状況について、あらかじめ厳格なルールを決めておきます。以下のキーワードが会話に出てきたら、その場ですぐに電話を切り、家族に確認することを約束してください。

  • 電子マネーカード(Apple Gift Card、Google Play、ビットキャッシュなど)をコンビニで買ってきて番号を教えてほしい
  • 警察官や銀行協会が「口座が危険なのでキャッシュカードを預かりに行く」「暗証番号を確認する」と言ってきた
  • 市役所から「医療費や保険料の還付金があるため、ATMで手続きをしてほしい」と言われた
  • 宅急便やレターパック、現金書留で現金を送ってほしいと言われた

公的機関や金融機関が、キャッシュカードを自宅に取りに来たり、暗証番号を尋ねたり、ATMで還付金の手続きを指示したりすることは絶対にありません。

ルール2:家族だけの「合言葉」を決めておく

「オレオレ詐欺」では、息子や孫を装って「携帯電話を落として番号が変わった」「会社の金を使い込んでしまい今すぐ現金が必要だ」と焦らせてきます。

近年では、SNS等に投稿された本人の動画や音声データを元に、AIで本物そっくりの音声を生成して電話をかけてくる「AIボイスクローン詐欺」も出現しています。

声だけで本人確認を行うのは危険であるため、家族間でしか知り得ない「合言葉」を決めておきましょう。

  • 例1:昔実家で飼っていたペットの名前
  • 例2:家族全員で行った思い出の旅行先
  • 例3:子どもの頃に親から呼ばれていた内輪のニックネーム

「番号が変わった」「至急お金が必要」と電話がかかってきたら、必ず合言葉を確認するか、一旦電話を切って事前に登録してある家族の元の電話番号へかけ直すルールを徹底してください。

ルール3:「怒らない・責めない」心理的セーフティネットを作る

詐欺被害に遭った高齢者への調査では、「騙されたと気づいたが、家族に怒られるのが怖くて言い出せなかった」「相談したらバカにされると思って隠してしまった」という声が非常に多く見られます。

家族が「なんでそんな怪しい電話に出たの」「あれほど気をつけろと言ったのに」と責めてしまうと、親は相談することを諦め、被害がさらに拡大してしまいます。

日頃から「最近の手口は巧妙だから、誰でも騙されそうになるよ」「少しでも変だなと思ったら、遠慮せずにいつでも電話してね。一緒に確認するから」と伝え、心理的なハードルを下げておくことが何よりの防犯対策になります。

7. トラブル発生時の緊急連絡先と相談窓口

万が一不審な電話を受けたり、金銭やカードを渡してしまったりした場合は、一人で抱え込まず、速やかに公的な相談窓口へ連絡してください。

実家の電話機や冷蔵庫などに、以下の窓口リストを貼り付けておくことをおすすめします。

相談窓口電話番号受付内容・対応機関
警察相談専用電話#9110詐欺電話や犯罪被害の相談、最寄りの警察本部・警察署へ接続
消費者ホットライン188(局番なし)架空請求、悪質商法、契約トラブルの相談(最寄りの消費生活センターへ接続)
IPA 情報セキュリティ安心相談窓口03-5978-7509サポート詐欺、ウイルス感染、PCセキュリティの技術的相談
国際電話不取扱受付センター0120-210-364固定電話での国際電話発着信の休止手続き(通話料無料)
NTT東日本・西日本 特殊詐欺対策ダイヤル東:0120-722-455 / 西:0120-931-965高齢者向けナンバー・ディスプレイ等の無償化手続き窓口

よくある質問(FAQ)

Q1. 実家の親が「自分は騙されないから大丈夫」と言って設定変更を嫌がります。どう説得すればよいでしょうか?

「親の判断力を疑っている」というアプローチではなく、「最近はAI音声や偽の警察組織など手口がプロ化していて、若い世代や企業でも騙される人が増えている」「実家の電話番号に怪しい勧誘電話がかかってくるのが心配だから、迷惑電話を自動で弾く設定だけさせてほしい」と伝え、親を尊重しながら技術的な防御を提案するのが効果的です。

Q2. iPhoneで「不明な発信者を消音」に設定すると、病院や配送業者からの大切な電話に気づかない心配はありませんか?

かかりつけの病院、役所の担当部署、近所の知人など、連絡が来る可能性がある番号はあらかじめ親のスマートフォンの「連絡先」アプリに登録しておくことで、消音されずに着信できます。

また、未登録の番号からの着信であっても着信拒否されるわけではなく、呼び出し音が鳴らずに不在着信履歴と留守番電話に残る仕様です。「用件がある場合は留守電にメッセージが入るので、履歴を確認して必要な相手にだけ折り返す」という運用を親と共有しておけば、大事な連絡を取りこぼす心配はありません。

Q3. 遠隔操作ソフトを入れられてしまい、パソコンを操作されました。初期化は必須ですか?

遠隔操作中にどのような操作が行われたかを正確に特定するのは難しく、バックドア(裏口)となる不正なプログラムを仕掛けられている危険性があります。

安全を期すためには、必要な個人データ(写真や書類など)のみをウイルスチェックしながら外付けストレージに退避させた上で、パソコンを工場出荷状態にリカバリ(初期化)することを強くおすすめします。また、そのパソコンで使用していた各種Webサービス(メール、通販、銀行など)のパスワードも、別の安全な端末からすべて変更してください。

まとめ

高齢の親を詐欺やネット被害から守るための対策は、本人の注意力だけに期待するのではなく、システムによる防御と家族の連携によって実現します。

  • 固定電話:NTTのナンバー・ディスプレイ無償化を申請し、国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)で国際電話の発着信を休止する
  • スマートフォン:iPhoneの「不明な発信者を消音」やAndroidの「迷惑電話ブロック」を有効にし、危険な着信を水際で遮断する
  • パソコン:広告ブロッカーの導入と、サポート詐欺の偽警告に対する強制終了手順(Alt + F4 等)の紙メモを掲示する
  • 家族ルール:お金・電子マネー・暗証番号の話題が出たら即相談するルールと家族の合言葉を共有し、怒らず相談に乗る関係を築く

帰省のタイミングや週末の連絡の機会を活用し、大切な家族が安心して暮らせる環境を整えてみてください。

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参考情報